2012年6月22日金曜日

故宮博物院

台湾といえば故宮博物院ですが、住んでるといつでも行けるものだと思ってしまうもので、2年前に台湾に来てから故宮へは一度も行ってませんでした。7月末に台湾を去ることが決まり、今になってやっと故宮へ行ってきました。

故宮博物院では清朝が所有していた美術工芸品が陳列されています。中でも印象的だったのは、乾隆という皇帝の所蔵していた陶磁器でした。この皇帝はかなりの好事家だったようで、故宮でも彼の所蔵品が多く所有されています。面白かったのは彼が所蔵してた骨董品の陶磁器には、彼が作った詩が彫ってあることでした。詩の内容はその骨董品についての感想などです。今の時代の価値観からすると(当時の価値観でもそうだったかもしれませんが)、高い金で買った美術品に自分の感想を書き足したりする人はいないでしょう。

作品に対する扱いは、概して今と感覚が違っていて面白かったです。ある書画の作品にはパスポートのようにハンコがたくさん押してありました。不思議に思って尋ねたところ、これは所有者が変わるたびにその所有者のハンコを押していってたようです。さらに歴代の所有者の名も、書の後ろに書き連ねられていたりします。このように作品には所有者の痕跡が残されており、オリジナルの状態をできるだけ保つ、という今の美術の保存の基本とかなり異なります。

故宮博物院は僕の地元の奈良・正倉院展を思い出させました。清朝の乾隆と同じように、奈良時代にも聖武天皇という稀代の好事家がいました。正倉院展ではこの帝によって収集された膨大なコレクションが、毎年その展示品を変えて展示されています。そして今のところ、正倉院展は日本で一日あたり最も人を集める美術展です。奈良時代は100年にも満たない短い期間でしたが、その期間に奈良を現在まで続く巨大な観光都市に作り上げた聖武天皇の文化的功績は計りきれないものがあります。


故宮の展示品は壷や書が多く、見た目が地味で退屈しがちですが、いろいろ背景を聞いて納得する部分がありました。いいガイドを付けて見て回ることをお薦めします。