2012年3月27日火曜日

ARMORY ARTS WEEK


2012年2月の下旬ごろから一ヶ月ほど数学の仕事でアメリカに出張していた。出張先は東海岸で、ちょうどその時期にニューヨークでアートフェアをやるということをhpの戸塚さんから聞いていたので、仕事の合間の3月9日10日と16日~18日にマンハッタンへ遊びに行った。この滞在は非常に刺激的だったので、すこし書き留めておこうと思う。

ちょうどこの時期、ニューヨークではthe Armory showという巨大アートフェアが行われていた。このアートフェアの期間中ニューヨークはアートウィークで、マンハッタンでは各地で色んなアートフェアが開催されている。その中の一つにhpgrp galleryが主催のNew City Art Fairがあった。hpgrp galleryは日本のファッション・インテリア・アートを扱う会社h.p. Franceが運営しているSOHOにあるギャラリーで、このアートフェアはhpgrpのギャラリースペースを使った日本のギャラリーと作家を集めたアートフェアだ。今回のニューヨーク滞在はこれらのアートフェアを見に行くのと、相島君に紹介してもらったアーティストの池添彰さんに会うのが主な目的だった。これまでにもニューヨークに行ったことがあったが、それはガイドブックに載っているような所を見て回った程度の観光だったにすぎなかった。今回は池添さんをはじめ現地の日本人アーティストたちと色々出会ってお話できたのが収穫だった。

New City Art Fairの関連イベントで、ニューヨーク滞在の日本人アーティストのスタジオを見て回るstudio visit tourがあった。その中で訪れたアーティストの一人である北出健二郎さんと、運よく一緒にお酒を飲んで話をする機会に恵まれた。彼は羊をモチーフとした丸っこいフォルムのセラミック作品を作る陶芸家で、作品の愛らしいフォルムとは裏腹にそこには社会的・政治的なメッセージも含まれている。ぼくは彼の"Atomic Shakers"という作品を購入した。これは日本に落ちた二つの原子爆弾をモチーフとしたこしょうケース型の作品で、食卓上にオブジェとして置いている。

またstudio visitで訪れた作家の一人である大山エンリコイサムさんにも会う機会に恵まれた。彼は独自の技法でグラフィティ作品を制作していて、グラフィティに関する論考も発表している。ストリートの感性だけではなく、理知的に作られたグラフィティは非常に興味深かった。studio visitでは10分くらいの滞在だったため、もう少し話を聞いてみたいと思い連絡をとってみた。彼はAsian Cultural Councilというgrantでニューヨークに来ているのだが、同じgrantのインドネシアから来ている舞台芸術家のアーティストのfarewell partyをするらしく、そこに誘っていただくことになった。クイーンズのアパートの一室で行われたパーティーはアジアの国々から来たアーティストたちが集まり、ニューヨークという街の多民族性や祝祭性を感じた夜だった。

クイーンズにある池添彰さんのスタジオにも個人的に訪れた。現在製作中の横5メートルにも及ぶ大型作品はすごい力作だった。池添さんの絵は自然の風景と複数の裸の男たちが戯れる様子を俯瞰のパースで描いているのが特徴的だ。そこには服を脱ぎ捨てて社会的階層から自由になった人々のユートピア的な風景が広がっている。油絵なのだが、やわらかい色彩と繊細で滑らかなタッチで描かれている。彼の作品も一目惚れして、小型の作品を買うことに決めた。

他のアーティストの作品をちゃんとした値段で買うのは、今回が初めてであった。低収入の私にとって作品を買うことは少し決断のいることではあるが、作品に惚れたというのはもちろん、彼らの気合いや心意気に惚れたというのも買う一因となった。またこのアート微熱状態なニューヨークの空気にやられてしまったのも大きい。この場の祝祭性こそアートの現場が持つ力であろう。しかし一方、自分の問題もここに来て浮き彫りになった。ニューヨークで出会ったアーティストは作品の質もさることながら、軒並み語り言葉が強かった。そして絵を売ることに対してもっと気合いが入ってた。またアートフェアでは村上・奈良以降の世代の若手日本人アーティストは全然存在感がなく、自戒の意味をこめてもっとがんばらないとダメだと思った。